免許人の地位の承継 (Succession of Status of the Licensee)

無線局の免許は、対物的許可の性格のほかに対人的許可の性格も併せ有しているので、免許人たる人格が変われば、原則として、無線局の免許の効力は消滅するものと考えるべきである。しかしながら、特に行政上及び社会上の便宜から、免許人が変わっても、引続き無線局の免許人の地位の承継が認められる場合がある。
電波法上免許人の地位の承継が認められるのは、次に掲げる相続、法人の合併又は分割、事業の全部譲渡及び船舶又は航空機の運行者の変更の場合だけである。
一 相続
免許人について相続があったときは、その相続人は免許人の地位を承継する(電波法第20条第1項)。
この場合は、当然承継といって、相続の事実が発生すると自動的に免許の地位も承継されることになっている。その場合、免許人の地位を承継した者は、遅滞なく、別に定める事項(無線局免許手続規則第20条の2)を記載した届書に、承継の事実を証明する書面を添えて、総務大臣又は総合通信局長に届け出なければならない(電波法第20条第7項)。なお、届出義務けたい(懈怠)に対しては罰則が設けられている(「30万円以下の過料」電波法第116条第1号)。
相続人が2人以上である場合は、民法の規定によって共同相続となるが、その場合は、無線局の免許も共同免許となる。しかし、電波法では、協議により免許人の地位を承継すべき相続人を定める場合を想定して、相続人を単一化した場合は、他の相続人がこれに同意した事実を証する書面を添付して届け出ることになっている(無線局免許手続規則第20条の2)。
二 法人の合併
免許人たる法人が合併したときは、合併後存続する法人(吸収合併の場合)又は合併により設立された法人(新設合併の場合)は、総務大臣の許可を受けて免許人の地位を承継することができる(電波法第20条第2項)。
この場合は、許可を受けて初めて承継ができるのであるが、その許可に当たっての審査は、免許欠格事由への該当の有無(電波法第5条)及び新設の場合の予備免許の審査要件(電波法第7条)について行われる(電波法第20条第4項)。
合併の場合の免許人の地位の承継の申請書に記載すべき事項及び添付資料は、別に定められており(無線局免許手続規則第20条の3)、またその申請者が、設立登記(新設合併の場合)又は変更登記(吸収合併の場合)を完了した時は、登記事項証明書を総務大臣又は総合通信局長に提出しなければならない(無線局免許手続規則第20条の3)。
三 法人の分割
法人の分割には、分割により設立した会社に、分割をする会社の営業を承継させる方法(新設分割という。)又は既に存在する他の会社に、分割する会社の営業を承継させる(吸収分割という。)方法があるが、いずれの場合も分割により無線局をその用に供する事業の全部を承継した法人は、総務大臣の許可を受けて免許人の地位を承継することができる(電波法第20条第2項)。
この場合も、許可を受けて初めて承継ができるのであるが、その許可に当たっての審査は、免許欠格事由への該当の有無(電波法第5条)及び新設の場合の予備免許の審査要件(電波法第7条)について行われる(電波法第20条第4項)。
分割の場合の免許人の地位の承継の申請書に記載すべき事項及び添付資料は、合併の場合と同様に別に定めされており(無線局免許手続規則第20条の3)、またその申請者が、設立登記又は変更登記を完了したときは、直ちに登記事項証明書を総務大臣又は総合通信局長に提出しなければならない(無線局免許手続規則第20条の3第8項)。
四 事業の全部譲渡
免許人無線局をその用に供する事業の全部の譲渡しをしたときは、その譲受人は、総務大臣の許可を受けて免許人の地位を承継することができる(電波法第20条第3項)。
この場合も、許可を受けて初めて承継ができるのであるが、その許可に当たっての審査は、免許欠格事由への該当の有無(電波法第5条)及び新設の場合の予備免許の審査要件(電波法第7条)について行われる(電波法第20条第4項)。
譲受けの場合の免許人の地位の承継の申請書に記載すべき事項及び添付資料は、別に定められている(無線局免許手続規則第20条の3の2)。
五 船舶、航空機の運行者の変更
船舶局のある船舶又は無線設備が遭難自動通報設備若しくはレーダーのみの無線局のある船舶について、船舶の所有者の移転その他の理由による船舶を運行する者に変更があったときは、変更後船舶を運行する者は、免許人の地位を承継する(電波法第20条第5項)。航空機局のある航空機若しくは航空機地球局(電気通信事業を行うことを目的とするものを除く。)又は無線設備レーダーのみの無線局のある航空機についても同様である(電波法第20条第6項)。
運行者とは、当該船舶又は航空機等の運行について実質的に支配している者をいう。所有権者、よう船契約者等が通常これに該当する。運行者は、当該船舶又は航空機等に設置してある無線局の運営者であり、かつ、通信の実施者となるものであるから、通信の実施者が免許人たるべきものとする建前から、運行者に変更がある場合、免許人の地位の移転の問題が生じてくるのである。
ア 船舶に係る運行者の変更は、所有権の移転(売買、譲渡、遺贈等)による場合のほか、よう船契約等による場合がある
イ 航空機に係る運行者の変更は、船舶の場合と同様に所有権の移転のほか、チャーター等による場合がある
なお、よう船や航空機のチャーター契約は、その契約態様が多岐にわたるものであるから、これが運行者の変更にかかわるかどうかは、個々の契約内容によって決まるものである。
上記の運行者に変更があった場合は、相続の場合と同様に当然に免許人の地位も承継され、総務大臣への届出義務が生じる(電波法第20条第7項)。届出の手続及び届出義務懈怠に対する罰則については、一の相続の場合と同様である。

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