高層建築物等の規制 (Control on Tall Buildings and Structures) †

一 高層建築物等による電波伝搬障害
周波数の高い極超短波(UHF)以上の周波数帯による無線通信回線は、有線通信に劣らない安定性と、きわめて優れた多重通信の能力をもつことによる経済性があり、また、広帯域を必要とするテレビ伝送に適する等いろいろの利点があるため、電気通信業務をはじめ、公共性の高い重要回線に広く利用されている。これらの周波数帯は波長が短いため、見とおし可能な概ね50km程度の地点に中継所を設けて回線を構成しているが、その通路に当たるところに、山岳や、高い建物等の障害物があれば、それにさえぎられて、電波伝搬が障害を受けることとなる。
我が国では、大中都市をはじめ広く建築物、工作物の高層化が進んでおり、このためマイクロ回線の伝搬障害が発生しやすい状況となっている。重要無線回線を故意に破壊し、機能障害を与えた者に対しては罰則が設けられているが(電波法第108条の2)、善意無過失による建築物等による機能障害については、土地所有権に基礎をおく財産権の行使と、重要無線通信のもつ高い公共性との調和を何処に求めるかというきわめて困難な問題がある。
電波法においては、以上の事情を考慮して、重要無線通信の確保のために伝搬障害防止区域を指定し、指定区域内の高層建築物について届出の義務を課し、総務省が伝搬障害の有無について判定を行い、障害ありと認めた場合は、関係者間で障害防止のための協議を行わしめ、場合によっては総務大臣が必要なあつせんを行う等の規定を設けて、両者間の円満な解決を図ることを期待している。
二 伝搬障害防止区域の指定
(1)電波法において伝搬障害防止の保護の対象としているのは、重要無線通信に限られている。重要無線通信とは、890メガヘルツ以上の周波数の電波による特定の固定地点間の無線通信であって、次に掲げる通信内容の無線通信である。(電波法第102条の2第1項)
ア 電気通信業務の用に供する無線局の無線設備による無線通信
イ 放送の業務の用に供する無線局の無線設備による無線通信
ウ 人命若しくは財産の保護又は治安の維持の用に供する無線設備による無線通信
エ 気象業務の用に供する無線設備による無線通信
オ 電気事業に係る電気の供給の業務の用に供する無線設備による無線通信
カ 鉄道事業に係る列車の運行の業務の用に供する無線設備による無線通信
(2)総務大臣は上記の重要無線通信の電波伝搬路における当該電波の伝搬障害を防止して、通信の確保を図るために必要があるときは、その必要の範囲内において、当該電波伝搬路の地上投影面に沿い、その中心線と認められる線の両側それぞれ100m以内の区域を伝搬障害防止区域として指定することができるものとされ(電波法第102条の2第1項)、現に全国の各主要都市について指定が行われている(電波法第102条の2第2項、電波法施行令第4条)。そして、伝搬障害防止区域を表示した図面を総務省及び関係地方公共団体の事務所に備え付けて、一般の縦覧に供されている。(電波法第102条の2第3項)
三 指定区域内の高層建築物等に対する規制
(1)高層建築物等の届出の義務
伝搬障害防止区域内において、次に掲げるような高層建築物等を建設しようとする場合は、建築主は、工事着工前に、敷地の位置、高さ、高層部分(地表高31mを超える部分)の形状、構造及び主要材料、その他必要な事項を書面により総務大臣に届け出なければならない。(電波法第102条の3第1項)
ア その最高部の地表からの高さが三十一メートルをこえる建築物その他の工作物(土地に定着する工作物の上部に建築される一又は二以上の工作物の最上部にある工作物の最高部の地表からの高さが三十一メートルをこえる場合における当該各工作物のうち、それぞれその最高部の地表からの高さが三十一メートルをこえるものを含む。以下「高層建築物等」という。)の新築
イ 高層建築物等以外の工作物の増築又は移築で、その増築又は移築後において当該工作物が高層建築物等となるもの
ウ 高層建築物等の増築、移築、改築、修繕又は模様替え(改築、修繕及び模様替えについては、総務省令で定める程度のものに限る。)
また、建築主が上記の届出をしないで、工事に着工したことを知ったときは、総務大臣は直ちに、期限を定めて、総務大臣に届け出るべき旨を命じなければならない。(電波法第102条の4第1項)
なお、最初の届出をせず又は虚偽の届出をした者には罰則があり(「30万円以下の罰金」電波法第113条第22号)、さらに、届出がないので届け出るべき旨を命じてもなお届出をせず又は虚偽の届出をした者にも罰則がある(「50万円以下の罰金」電波法第112条第5号)。
(2)伝搬障害の有無の判定及び通知
総務大臣は、前述の工事に関する届出について検討した結果、障害原因となるかどうかを判定し、届出のあった日から3週間以内に、障害がない場合はその旨を、また、障害がある場合は、障害原因部分及び理由を付した文書により、建築主に通知しなければならない(電波法第102条の5第1項、第2項)。また、同時に必要事項を無線局の免許人にも通知する(電波法第102条の5第3項)。
(3)障害原因となる高層部分の工事の制限
(2)において障害がある旨の通知を受けた建築主は、一定の場合を除き、その通知を受けた日から2年間は、その障害原因部分の工事を禁じられる(電波法第102条の6)。
(4)その他、障害防止のための建築主及び障害防止区域に係る重要無線通信の無線局の免許人の間の協議並びに総務大臣のあつせん電波法第102条の7)、建築主の義務違反等の場合の措置(電波法第102条の8)等について定めてある。
(5)総務大臣は、この伝搬障害防止に関する規定を施行するために、特に必要があるときは、その必要範囲内において、建築主から、工事の計画又は実施に関する事項で認められるものの報告を徴することができることになっているが(電波法第102条の9)、これに対し、報告せず又は虚偽の報告をした者には罰則がある(「30万円以下の罰金」電波法第113条第23号)。
四 総務大臣及び国土交通大臣の協力
この障害防止の措置は、重要無線通信を確保するためのものであるが、この規制を受ける対象は建築物等であり国土交通大臣の所管に係るものである。このため総務大臣及び国土交通大臣は、前記各事項の実施に関し、相互に協力するものとする(電波法第102条の10)という特別の規定が設けてある。

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